時効とは
時効とは、時間の経過により法的効力を発生させる制度である。時効により権利を取得する場合を取得時効、時効により権利が消滅する場合を消滅時効という。
時効とは
時の経過により法的効力を発生させる制度。
権利を取得する取得時効、逆に消滅する消滅時効がある。
必要な時の経過に加え、時効により利益を受ける者の意思表示(援用)で効力が発生する。
時効の期間が開始する日を起算日といい、時効が完成するとその効力は起算日に遡る。
時効の援用
時効により利益を受ける者が、時効の利益を受ける意思を表示すること。
利益であっても強制はできないので、時効の効果には援用があってから。
時効を援用できるのは、時効により利益を受けるもの。例えば借金の時効の場合、借金の借手またはその保証人。
時効利益の放棄
援用の逆。時効により利益を受ける者の道義心を鑑みての制度。
時効利益の放棄は、時効完成後でないとできない。
時効完成を知らずに時効完成後に債務者が債務を承認した場合、信義上その債務について時効援用できない。(判例)
時効中断
継続状態を破る事実が発生した場合は、時効の進行は中断される。
停止前の期間を時効期間として参入しない。中断前の期間はなかったことになる。
時効の中断事由
1)請求
裁判上の請求、支払督促、和解や調停の申し立て、任意出頭、破産手続き参加、催告など。
裁判上の請求は、訴えの提起。却下・取下げの場合は中断の効力は生じない。
催告は、裁判外で債務履行を請求すること。時効完成までわずかの期間の時に、とりあえず催告を行う。6ヶ月の猶予を確保できる。
2)差押え・仮差し押え・仮処分
強制執行の前に、債務者の財産を保全する手続き。
3)承認
時効により権利消滅の利益を得る者が、権利の存在を認めること。
被保佐人・被補助人は単独で承認可、未成年の承認は取り消せる。
時効停止
中断が困難な場合は、時効の進行が停止される。
停止前の期間を時効期間として参入する。
時効の停止事由
1)法定代理人の不在による停止
2)天災などによる停止
3)夫婦間の権利、相続財産に関する停止など
時効の停止事由は民法158条の事由のみ、個人事情は含まれない。
取得時効
1)所有権の取得時効
他人の物を、所有の意志を持って平穏かつ公然に20年間占有(自主占有)した者は、その物の所有権を取得する。
占有開始時に善意無過失の場合10年。
占有をやめたり奪われたら、取得時効中断。
2)所有権以外の財産権の取得時効
所有権以外で時効により取得できる権利は、地上権・永小作権・地役権などの用益物権と不動産賃借権。
「所有の意思」が「自己のためにする意思」となる以外、要件は1)と同じ。
財産権の権利の行使をやめたり、他人に権利行使の妨害をされたら、取得時効中断。
3)取得時効と不動産登記
時効により不動産所有の権利を取得の場合、第三者に対抗するためには登記が必要となる。
取得時効完成前であれば登記なしでも第三者に対抗できる。完成前は登記できなくて当然だから。
消滅時効
権利を行使しない状態が一定期間継続すると消滅時効が完成する。
債権は、10年間行使しないと消滅する。
債権・所有権以外の財産権は、20年間行使しないと消滅。
1)債権の消滅時効の起算点(債権を行使することができる時)
確定期限付き債権の起算点:期限が到来した時
不確定期限付き債権の起算点:期限の到来した時(父親が死んだ時)
期限の定めのない債権:債権成立の時。ただし返済期限のない消費貸借契約の場合は、債権成立から相当期間経過した時。(調達の猶予期間のため)
2)債権以外の権利の消滅時効
所有権は消滅時効にかからない。地上権、永小作権、地役権は20年で消滅時効。
取得時効により元の権利者は所有権を失うが、これは消滅時効によるものではなく、時効取得者が権利を取得する反射的効果。
3)判決により確定した権利の消滅時効
医者の治療代、大工の工事代は3年。学校の授業料や商品代は2年。旅館の宿泊代、飲食代は1年で各々消滅時効となる。
しかし、判決で確定した場合、これらの短期消滅時効にかかる債権でも、弁済期が到来している限り一律に10年の消滅時効期間となる。
→10年経過しないと消滅時効を主張できなくなる。
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