制限行為能力者制度とは
判断能力に問題のある人を保護する制度。保護者の関与なしの法律行為を取り消せる。
制限行為能力者とは、未成年者、成年被後見人、被保佐人、被補助人の4種。
未成年者
20歳未満の者。20歳未満でも婚姻した者は成年者として扱われる。
未成年者が保護者の関与なしに行った法律行為は取り消せる。ただし以下は取り消せない。
1)単に権利を得る、または義務を免れる行為
贈与や借金減額など不利益がない場合。
2)目的ありの財産処分
参考書代としてもらったお金で参考書を買うなど。
3)目的なしの財産処分
好きな物を買えともらったお金で物を買う行為。
4)法定代理人からの営業許可を受けて行う営業活動
宅建業など。
未成年者の保護者:法定代理人(通常、親権者。適格者不在の場合は家庭裁判所が選任。)
未成年者の法定代理人は、代理権(赤ん坊)、同意権(20歳近く)、取消権、追認権を持つ。
成年被後見人
判断能力が欠ける者。
本人、配偶者、4親等内の親族などの請求により、家庭裁判所で後見開始の審判を受けた者。
成年被後見人の単独法律行為は取り消せる。
成年後見人:法定代理人
代理権、取消権、追認権を持つが、同意権はない。
成年被後見人は同意の意味すら理解できない状態だから。
法人でも可、複数人の選任も可。
被保佐人
判断能力が著しく不十分な者。
本人、配偶者、4親等内の親族などの請求により、家庭裁判所で保佐開始の審判を受けた者。
原則として単独で有効な法律行為をすることができる。
重要な財産上の法律行為については、保佐人の同意または裁判所の代諾許可が必要。
保佐人:保護者
同意権、取消権、追認権を持つ。
代理権は、家庭裁判所の判断により特定の法律行為について与えられる。代理権は本人(被保佐人)の同意必須。
被補助人
判断能力が不十分である者。
本人、配偶者、4親等内の親族などの請求により、家庭裁判所で補助開始の審判を受けた者。
原則として単独で有効な法律行為をすることができる。
ただし、家庭裁判所が審判で指定した特定行為は、取り消しうる。
補助人:保護者
家庭裁判所は、被補助人の同意を要件として、特定の法律行為(民法13条1項の一部)について、補助人に同意権を与えられる。
また特定の法律行為について補助人に代理権も与えられる。代理権は本人(被補助人)の同意必須。
保護者と不動産売買などについて
成年後見人、保佐人、補助人が本人を代理して、居住用の不動産を売却、賃貸、賃貸借の解除、抵当権設定などを行う場合は、家庭裁判所の許可必須。
取引相手の保護
制限行為能力者と取引をした相手方を保護するため、相手方の催告権、制限行為能力者の詐術が認められている。
1)相手方の催告権
追認するか否か、意思表示を催告すること。
催告を受けた保護者が「取り消す」とすれば、取引はなかったことになる。
催告は1ヶ月以上の期間を定め、保護者に対して行う。
→保護者からの返事なしなら追認とみなされる。ただし後見監督人の同意が必要な行為の場合は取消とみなされる。
後見監督人:成年後見制度において判断能力の不十分な人の利益を守るために、本人に代わって後見人を監督する人のこと。
催告は被保佐人、被補助人に対しても可能だが、1ヶ月以上の期間を定めて「保佐人、補助人の追認を得て返事するべし」となる。
保佐人、補助人の追認を得たという返事がなければ、取消とみなされる。
2)制限行為能力者の詐術
制限行為能力者が行為能力者と偽ったり、保護者の同意ありと偽ったりする行為。つまり制限行為能力者が嘘をつく行為。
制限行為能力者の詐術を行い取引した場合は、取り消すことはできない。
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