物権と物権変動

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物権とは特定の物を直接支配して、排他的に利益を受けられる権利。物権は、以下のようにさらに細かな権利に分類される。

物権
 |-占有権
 |-本権
   |-所有権
   |-制限物権
     |-用益物権–地上権、永小作権、地役権、入会権
     |-担保物権–留置権、先取特権、質権、抵当権

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物権の種類

占有権:事実上の支配のみで生じる
本権:物を支配する権利
所有権:物を使用・収益・処分できる完全な物権
制限物権:所有権をなんらかの形で制限する
用益物権:所有権を使用・収益の面で制限する
担保物権:所有権を処分(交換価値の面)で制限する

物権変動(物権の発生・変更・消滅)は当事者の意思表示のみにより効力を生じる。(意思主義)

物権変動と登記

不動産に関する物権の得喪および変更は、登記をしなければ第三者に対抗することができない。登記が対抗要件となる。
民法177条でいう、登記なしに対抗できない第三者とは、「相手方に登記がないことを主張する正当の利益を有する者をいう」(判例)。
不法に占拠や損害行為を行う者は、民法177条の第三者に該当しない。

登記なしに対抗できる第三者

無権利者には登記なしで対抗できる。
以下の者に対しては登記なしで対抗できる。
1)詐欺・脅迫により登記申請を妨げた第三者
2)他人のために登記申請の義務を負う者(代理人や司法書士など)
3)背信的悪意者(第一譲受人を妨害する目的の第二譲受人)

対抗要件として登記が必要な場合、もしくは不要の場合

1)二重譲渡
二重譲渡の場合、先に登記した者が完全な所有権を取得する。
二重譲渡で後の取得者が悪意であっても、先に登記した者の勝ちとなる。

2)取消と登記
・詐欺による取消と第三者
A→B(詐欺でAから土地取得)→C へと土地が売却された場合。
CがAの取消前に現れた第三者で、善意であれば登記に関係なく保護される。
CがAの取消後に現れた第三者の場合は、善意・悪意に関わらず先に登記した方の勝ち。→Bによる二重譲渡の形に類似。

・制限行為能力や脅迫による取消と第三者
この場合、善意の第三者保護規定が存在しない。
取消前の第三者は、登記していても保護されない。
取消後の第三者は、二重譲渡類似となり先に登記した者の勝ち。

3)時効取得と登記
AがBの甲土地を占有し、時効成立後援用した場合で…
BがAの取得時効完成前に、第三者Cへ甲土地を譲渡した場合、Aは登記なしでCに対抗できる。Cは時効完成時の権利者。
BがAの取得時効完成後に、第三者Cへ甲土地を譲渡した場合、二重譲渡の形となり、AとCで先に登記した者の勝ち。

4)相続と登記
AがA所有の甲土地をBに売却、その後Aが死亡して、Cが甲土地を相続した場合…
Bは登記なしでCに対抗できる。Cは売主としての権利・義務も相続している。

Aが死亡し、BとCが甲土地を共同相続、そしてBが甲土地の全部をDに売った場合…
Cは自己の相続分について、登記なしでDに対抗できる。

5)解除と登記
Aが甲土地をBに売却したが、解除事由が発生しAが売買契約を解除した場合…
解除前に現れた第三者Cは、善意・悪意を問わず登記があれば保護される。(判例)
解除後の第三者Cは、二重譲渡の形となり、AとCで先に登記した方の勝ち。

6)賃貸借と登記
Aの甲土地に、借地人Bの建物がある場合で、Aが第三者Cに甲土地を譲渡した場合…
Bが甲土地の賃借権を登記しているか、借地上の建物の登記(借地借家法の対抗要件)していれば譲受人の第三者Cに対抗できる。

・借地(甲土地)の譲受人に対する明渡請求
判例では、甲土地の譲受人Cが借地賃借人Bに対して、借地権を否定して明渡請求するためには、土地の移転登記が必要とある。

・借地(甲土地)の譲受人に対する賃料請求
譲受人Cが、借地権の存在自体は認めて、Bに賃料を請求する場合。
この場合、Cは登記が必要となる。そうでないとBは譲渡人Aと譲受人Bのどちらに賃料を払えばよいか判断できない。

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