抵当権とは

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抵当権とは、物上保証人が不動産などを自分の手元に留めたまま債務の担保として提供し、債権者がその担保目的物(その不動産)から優先弁済される権利。
抵当権の目的物にできるのは、不動産、地上権、永小作権のみである。

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抵当権とは

債務者または第三者(物上保証人)が、不動産などを自分の手元に留めたまま、債務の担保として提供し、債権者がその担保目的物(その不動産)から優先弁済される権利。
抵当権の目的物にできるのは、不動産、地上権、永小作権のみ。

物上保証人(ぶつじょうほしょうにん)とは、自己の財産をもって他人の債務の担保に供した者をいう。
たとえば債務者AがB銀行から3千万円を借りる際に、Cが自己所有の不動産甲にBのAに対する債権を被担保債権とする抵当権を設定した場合、このCが物上保証人にあたる。

1個の担保目的物に複数の抵当権を設定できる。
抵当権が登記された順番に、1番抵当権、2番抵当権、3番抵当権、となる。
先順位の抵当権者から優先弁済され、競売に残額がある場合に次順位の抵当権者が弁済される。
また、先順位の抵当権が弁済などで消滅したら、次順位以降の後順位抵当権が繰り上がる(順位上昇の原則)。

抵当権の効力の及ぶ範囲

抵当権は、抵当地の上の建物を除くほか、付加一体物に及ぶ。
付加一体物には、付合物と抵当権設定時に存在した従物がある。

1)付合物
抵当目的物たる土地や建物に付着して、独立性を失っている物。
土地上の立木や建物の内外を遮断する雨戸、入り口のガラス戸、増築部分など。
付合物は抵当権が設定された後に付加されたものでも、抵当権の効力が及ぶ。

2)従物
抵当目的物たる土地や建物を助けるために付属された物で、独立性を失っていない物。
家屋に付属された障子、畳、建具や庭園の石灯籠など。
判例では、これらの従物は抵当権設定時に抵当目的物に付属されていれば、抵当権の効力が及ぶ。
従物には権利も含まれ、借地上の建物に抵当権設定の場合、建物が建つ敷地の借地権にも抵当権の効力が及ぶ。

果実に対する抵当権の効力

抵当権は、設定者に抵当目的物を使用収益させたまま、債権を担保する。
抵当権の被担保債権につき、債務不履行があった場合は、果実(天然果実、法定果実)に抵当権の効力が及ぶ。

抵当権が担保する債権の範囲

抵当権により優先弁済を受けられる範囲は、抵当権設定当時の元本、満期となった最後の2年分の利息。
後順位抵当権者が存在しない場合は、2年分に限定されず、利息全額について弁済を受けられる。

抵当権により優先弁済を受ける方法

1)担保不動産競売

2)抵当直流
質権では、弁済に代えて質物の所有権を質権者に移転する契約は禁止。(流質契約の禁止)
抵当権では、弁済に代えて抵当目的物の所有権を抵当権者に移転する契約は有効。(抵当直流)
ただし暴利行為を防ぐために、清算義務を課している。

3)担保不動産収益執行
主にオフィスビルや賃貸マンションが対象。
抵当権者は、抵当権の実行として、担保不動産収益執行の申立てをできる。
開始決定が出されると、差押えの効力が生じ、担保不動産の管理人が選任され、賃借人は賃料を管理人に支払う。
管理人は、抵当権者に定期的に配当を行い、新たな賃貸借契約も締結できる。

抵当権と賃借権

抵当権設定後に設定された賃借権は、短期でも原則として抵当権者に対抗できない。

1)明渡猶予制度
抵当権登記後の賃借権による賃借人や、強制管理また担保不動産収益執行と競売手続開始後の賃貸借による賃借人は、競売買受のときから6ヶ月の明渡猶予期間が与えられる。
明渡猶予期間は、賃sにゃく人は、目的不動産の競落人に賃料相当額を支払う。
賃借人が支払しないときは、競落人はただちに明渡請求できる。
また、明渡猶予制度は賃貸借の承継ではないため、競売買受人は敷金返還義務を引き継がない。

2)抵当権者の同意制度
登記した賃貸借の存続について、先に登記したすべての抵当権者が同意して、その同意の登記がある時は、同意した抵当権者に対抗力を取得する。
つまり賃貸借が存続できる。
同意の対象となる賃貸借の登記には、存続期間や賃料、敷金などが登記される。

法定地上権

土地と建物の所有者が同一で、競売により土地と建物の所有者が異なることになってしまった場合…
法によって地上権を設定したものとする、これが法定地上権。

抵当地上の建物の競売

更地として高く評価した土地に、土地の所有者があとから建物を建てた場合に、法定地上権を成立させると、土地の競落価格が下がり、抵当権者は損害を被る。
ゆえに、更地に抵当権を設定した場合、法定地上権は成立しない。
更地に抵当権を設定した後、抵当地上に設定者や借地権者が建物を建造した場合には、土地の抵当権者は、抵当権実行時に土地と建物を一括して競売できる。
これが抵当地上の建物の競売の制度。ただし、抵当権の効力である優先弁済権が及ぶのは、土地代の部分についてのみ。

抵当目的物と第三取得者

抵当権設定者は、抵当権の目的たる不動産を第三者に譲渡したり、第三者のために地上権を設定したりできる。
この場合の抵当目的物の買受人や地上権取得者を第三取得者という。
しかし、抵当権が実行されると、所有権は競落人のものとなり、第三取得者は権利を失う。抵当権設定登記後の地上権も競落人に対抗できない。
そこで、第三取得者の権利を確保する手段として以下がある。

1)抵当権消滅請求
第三取得者側から権利取得代金、もしくは指定金額を抵当権者に弁済or供託して抵当権を消滅させる。→抵当権消滅請求
第三取得者が、登記した各債権者に一定の書面を送付→各債権者が承諾し、第三取得者が申出額を支払うと抵当権消滅。
抵当権者が消滅請求を拒絶するには、書面の送達後2ヶ月以内に競売を申し立て、債務者および抵当不動産の譲渡人に通知する。
期間内に競売申立がないときは、抵当権消滅請求を承諾したとみなされる。
以前は滌除(増加競売による方法)という制度があったが、抵当権者の負担が大きく廃止された。

抵当権消滅請求は、抵当不動産の所有権を取得した者。
請求期間は、抵当権が実行され、競売による差押えの効力が発生する前。
第三取得者は、抵当権消滅請求の手続が終わるまで代金の支払を拒むことができる。

2)代価弁済
第三取得者が自分の権利を守るため、抵当権者の請求に応じて、売主に払うべき売買代価(代金)を抵当権者に支払うと、抵当権は消滅する。
抵当権者からすると、競売価格は時価よりはるかに低いため代価弁済のほうが得な場合が多い。

共同抵当

同一の債務を担保するために、数個の不動産の上に設定された抵当権のこと。
Bが所有する不動産、甲(300万円)、乙(200万円)の場合で…
Aが甲乙両方に300万円の1番抵当、Cが甲に100万円の2番抵当、Dが乙に100万円の2番抵当の場合。

1)同時配当(甲乙同時競売)の場合
Aは債権額を各不動産の価額に応じて分配。
甲代金のうち180万円、乙代金のうち120万円を、Aが優先弁済を受ける。
Cは甲の残額120万円のうち100万円、Dは乙の残額80万円の弁済を受ける。

2)異時配当(甲土地のみ競売)の場合
Aは甲代金300万円の弁済を受ける。
もし同時配当が行われたらAが乙代金から優先弁済を受けたであろう120万円の範囲内で、CはAの乙に対する抵当権を行使できる。
つまり、乙が後で競売された時には、乙代金のうち、120万円の範囲でCは優先弁済を受けられる。
CがAの抵当権を行使→Aに代位する。物権変動であり、Aの抵当権に付記登記することで対抗要件を備える必要がある。

いずれにせよ、後順位抵当権者が不利益を被らないようにしている。

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